ホーム会報>会報No139(2017.7)8頁(目次)

会報139号(2017.7)8頁

 (公社)富山県鍼灸マッサージ師会による会報139号(2017.7)8頁です。

富山鍼灸学会 学術講習会 受講報告

富山鍼灸学会 会員 浜田 志保

日時:平成29年3月19日(日)13時30分〜16時
演題:「東洋医学的不妊カウンセリングによる女性のための鍼灸治療」
講師:一元流鍼灸術講師 ビッグママ治療室院長 米山章子先生

不妊は、私にとって関心が高い臨床テーマの一つで、勉強の好機と思い、参加させていただきました。米山先生は、はじめに治療の基本スタンスについてお話されました。四診をしっかり行って、その人を観察し、理解し、考察し、治療し、寄り添うこと。そして豊富な臨床経験のもとで、不妊から妊娠につなげた4つの症例を、解説されました。

@ 弁証論治に基づいたドーゼの確保:寝起きダメ、踵の冷え、疲労感など。腎虚肝鬱?血→腎気を上げることを中心に週一回鍼治療。毎日自宅施灸。睡眠の確保。漢方薬服用を提案。→本人が理解し、しっかり取り組んだ結果、治療10ヵ月で妊娠。

A 血流不育問題の不妊:漢方で改善しない、あかぎれ・霜焼け、芯からの冷えあり。11月くらいから冷えの進み方が急速→不育症の検査をすすめ、血液凝固に関する家族歴を確認。アスピリンを服用してもらうことも。胎盤が出来上がる妊娠初期に治療ドーゼを上げてのりきる。子宮筋腫や内膜症の方には大豆製品カットをすすめている。

B モノ(栄養)取入能力不足の不妊:食事記録に問題なし。漢方は胃に負担となり飲めない。生理時下痢。→手強い。先ず脾肺の気虚を救ってから腎気を補う。2年後妊娠。

C モノ(栄養)不足の不妊:食事記録に問題あり。節約レシピをしていたことを発見。→蛋白質を摂るなどの栄養指導をし、身体を変えていきながら、補腎の治療。

妊娠が可能な時期はどうしても限られますし、治療の継続には経済的問題も伴います。妊娠率アップのために、西洋医学との連携(検査など)、栄養指導(毎回1週間分の食事記録を提出してもらう)、自宅での施灸指導など、治療院で出来ることを徹底的に行っている姿勢が、本当に素晴らしいと感じました。

講義のあとの実技では、腰痛・膝痛を主訴とする女性のモデル患者への治療が行われました。鍼のほかに、灸ペット(辰巳製作所)という温灸器や、炭性の棒灸を使用していたのが興味深かったです。治療手順は、「補って、動かして、集める」。つまり、腹部や腰臀部(骨盤)への治療を最後に行うそうです。また、手足の冷えがある場合、その冷えが子宮の温養の妨げにならないように、かと言って末端の血流改善の治療になってしまわないように、ドーゼバランスを考えなければならないとのお話もありました。

「ビッグママ」は同業の占いをする方に付けてもらったお名前とのこと。醸し出す安心感はまさにお名前にぴったりの素敵な先生でした。勉強させていただいたことを今後臨床に生かしていきたいと思います。ありがとうございました。

実技指導される米山先生
実技指導される米山先生