(公社)富山県鍼灸マッサージ師会による会報138号(2017.2)13頁です。
高岡支部 山口 勇
平成28年11月20日(日)午後2時から定期学術講習会が高岡市ふれあい福祉センターに於いて開催されました。この講演会は例年高岡市医師会から講師推薦を受けて開催されており、今回の講師は高田整形外科医院・高田裕恭(たかだひろやす)先生で、「ロコモティブシンドロームについて」と題して講演されました。聴講者は31名、今回の講習会はネット配信がありませんでした。
高田先生は1.ロコモについて 2.運動器不安定症 3.運動器の痛み「腰痛症など」三つのテーマに分けて講演されました。
1.ロコモの概念
筋肉、骨、関節などの運動器に障害が起こり、立つ、歩くといった機能が低下している状態で、進行すると介護が必要になるリスクが高くなる状態がロコモティブシンドローム(略称:ロコモ)です。次にロコモチェック。
高齢者でこの7項目中1つでもあてはまる項目があればロコモの可能性があります。驚くことに最近は高齢者ばかりでなく子供たちにもロコモが増えつつあるそうです。ゲームやスマホばかりで外で遊ばない、活発に体を動かす機会が少ないなどが原因のようですが、むべなるかなといったところでしょうか。
次にロコモ度テストについて話されました。ロコモ度テストは移動機能を確認するためのテストです。
ロコモ度テスト1 立ち上がりテスト(脚力をしらべる)
ロコモ度テスト2 2ステップテスト(歩幅をしらべる)
ロコモ度テスト3 ロコモ25(身体の状態・生活状況を25の質問項目でチェックする)
以上三つのロコモ度チェックを評価した上で適切な体操やロコトレをサポートします。ロコトレの基本はスクワット(筋トレ)と片脚立ち(身体のバランス)でロコモ度チェックや筋トレの方法についても詳細な説明がありました。
2、運動器不安定症
歩行時にふらついて転倒しやすい、関節に痛みがあって思わずよろける、軽い外傷で骨折するなどの病態を疾患として認識し、それに対する運動療法などの治療を行うようです。
運動器不安定症の診断基準
@脊椎圧迫骨折および各種脊椎変型など A大腿骨頸部骨折などの下肢の骨折 B骨粗鬆症 C変形性関節症 D神経・筋疾患・・・などの11の運動器疾患、またはバランス能力、移動歩行能力の低下が生じ、閉じこもりや転倒リスクが高まった状態のことです。
3、運動器の痛みについて
@侵害受容性疼痛 A神経障害性疼痛 B心因性疼痛 の3種類およびそれらの混合型疼痛について説明されました。
高田整形外科医院では腰痛の患者様が最も多いとのことですが、状況にもよりますが急性腰痛では安静よりも運動が有効、消炎鎮痛剤などの薬物療法は有効、温熱療法は急性で有効といったようなエビデンス評価がされているとの話でした。
高齢化が加速する今、いつまでも自分の足で歩き続けていくために運動器を長持ちさせ、ロコモを予防し健康寿命延ばして行くことが求められていると思います。運動器の慢性的疼痛や障害などを主要因とするロコモは鍼灸マッサージの施術適応範疇と考えられます。鍼灸マッサージ師として日常の臨床を通じて地域の皆様の健康維持に少しでも役立つようにお手伝いしたいものです。
講演される高田先生
立ち上がりテスト