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会報137号(2016.7)9頁

 (公社)富山県鍼灸マッサージ師会による会報137号(2016.7)9頁です。

はり きゅう マッサージ 健康だよりNo9

鍼灸マッサージのホルミシス作用について

 富山支部 林 博司

 ミズーリ大学・生命科学教授のトーマス・D・ラッキー博士に、アメリカNASA(航空宇宙局)が宇宙飛行士の浴びる地上100倍の放射線が生体に与える影響の調査研究を依頼した。その結果、放射線は危険などころかむしろ低レベルであれば人体にとって有益であるという。従来どんな微量であっても危険であるという学説からは真っ向から対立するものでした。これが放射線のホルミシス効果であって現在では低放射線療法が認められています。(東京有明医療大学 川嶋朗教授の解説です)
 『東洋療法』に井上正康先生の「医者いらず」が連載されていますが、2月号の題は「生体のストレスとホルミシス」でした。これに私の独断と偏見的な解釈をしてみました。

 一か所に生育する植物は害虫から身を守るため何億年もかけて様々な防御機構を進化させてきたのが苦味や渋味などの毒物であり天然の殺虫剤です。このような細胞毒が軽度のストレスとしてホルミシスと呼ばれる生存支援反応を引き起こし、ストレス負荷前よりも生存能力を強くします。
 ワサビのアルカリイソチオシネアート、ニンニクのアリシン、トウガラシのカプサイシン、カレーのクルクミン、コーヒーやお茶のカフェイン、酒のアルコール、タバコのニコチンなどが知られている。これらの物質は細胞障害を抑制する作用から抗酸化物と誤解されてきましたが、少量の毒作用は生存力を強化する軍事訓練として機能しています。
 その他に運動による筋肉の炎症反応や心臓への適度な負荷刺激、精神的なストレスによる復元力(レジリエンス)アップはホルミシス反応です。

 動物にとって永遠の宿敵である寄生虫や病原菌ウィルスの脅威から身を守ってホルミシス誘起物質は天然の植物である薬草や鉱物の中にあり、多くの医薬品として使われています。

 断食療法やイスラム教のラマダン等は脳に低血糖のストレスを与え、神経細胞の生存能力を強化し、神経毒に対する抵抗力を高めアルツハイマー病やパーキンソン病になる可能性を低下させると考えられています。私も断食を体験したことがありますが、その達成感や爽快感ばかりでなく、それまで当然と思って三度三度食していた食べ物に対する考え方が根底から変えさせられた様で禅でいうところの悟りに近いと思われる感動を覚えた記憶があります。

 生命が誕生して5億年とか、営々として命を繋いできた歴史の中に様ざまな危機や変化に負けない生命力を宿してきました。その蓄積結果が進化であり免疫システムです。過酷なストレスは死滅ですが適度のストレスは生命力の強化になります。鍼灸マッサージはツボを刺激しますとイタアツキモチイイと響きホルミシス作用を介して生体機能を高めます。