(公社)富山県鍼灸マッサージ師会による会報135号(2015.7)5頁です。
高岡支部 竹部隆江
3月20日、富山鍼灸学会・大学講座「腰・下肢部の刺針について−大学教育の最新事情(鑑別診断から治療まで)−」を聴講しました。講師は明治国際医療大学准教授 井上基浩先生です。
井上先生は、「運動器系疾患・症状に対する鍼灸治療」を専門とし、長年の研究生活で、「X線透視下神経根鍼通電療法」「末梢神経の再生促進を目的とした直流鍼通電療法」などラットを使った動物実験を重ね開発し、伝統的な鍼灸を時代に応じ進化させる取組を続けられています。
当日は、午前が講義、午後は実技供覧で、丸一日の充実した内容の講座でした。解剖学は専門学校時代に学びましたが、時間の経過と共に忘れている事が多く、久しぶりに授業を受けているような感覚で学生に戻ったようでした。
また、「腰痛症に対する鍼治療と局麻注射(麻酔)の鎮痛効果の比較」の研究では、鍼治療の方が相対評価が高く、鍼治療と局麻注射は刺すまでは同じ刺激療法ですが、麻酔薬を注入した時点で一時的な限局性の疫痛抑制はできるが、疼痛抑制の神経伝導路までも遮断してしまうため、刺激療法による疼痛抑制効果が薄れるという研究結果は興味深い内容でした。
午後の実技供覧では、神経や筋肉の走行をしっかりと捉えた刺鍼方法を学びました。
【傍脊柱部刺鍼】
障害部位に関連した反応部(主に緊張、硬結)を触診により確定し、反応の深度も考慮しながら刺入する方法。
【椎間関節部刺鍼】
棘突起の間から外方へ約2cm。椎間関節部の知覚神経が密集している場所に当てる感じで刺鍼する方法。
【障害末梢神経走行部刺刺鍼】
下肢症状が出現している場所の神経支配より中枢寄りにその神経が走行している部位へ刺鍼する方法。
【腸腰筋刺鍼】
仰臥位、鼠径部のスパルカ三角部で動脈拍動部の外方部に刺釧載する方法。腸腰筋が短縮・緊張・拘縮を起こし、L1〜L4の神経根障害の症状を起こしている場合、筋緊張を緩めることで腰下肢の症状を緩和。
【陰部神経鍼通電療法】
会陽穴の外4cmのあたりに深さ6〜7cm刺入し、同じ所に2本刺鍼し、10〜20Hz で10分間通電。
日頃、経穴の反応や皮膚の状態など表面から得られる情報をもとに治療することが多いのですが、その下にある筋肉・血管・神経がどのように走行して領域を支配しているのかということも頭に入れて治療に携わらなくてはいけないと思いました。また、最新の実験や研究の情報を聞くことができ、症状や疾患を診る時のヒントや鑑別する力を養える良い機会でした。今後も自己研鎖を重ねていきたいと思います。
講演される井上先生
井上先生の実技指導