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会報137号(2016.7)7頁

 (公社)富山県鍼灸マッサージ師会による会報137号(2016.7)7頁です。

富山鍼灸学会学術講習会 「飛針・特殊針法」

 富山支部 内田雄二

 5月8日(日)富山県鍼灸マッサージ師会会館3階ホールにおいて富山鍼灸学会の総会に引き続き学術講習会が開催されました。講師は猪飼鍼灸院長の猪飼祥夫先生で『ひたすら臨床〜1.飛針の手技 2.特殊針法など〜』と題して、とことん臨床にこだわったご講演をしていただきました。

 講演はほぼ全編、実技をしつつ講演するという大変ユニークなものでした。

 飛針(とびばり)とは刺鍼手技で、そのルーツは中国の張家維先生(又はその先生の司徒鈴先生)の発案で、猪飼先生は中国に留学した時にそれを学びました。この刺鍼法を私は中国鍼の刺鍼法として少し知っていましたが、詳細は知りませんでした。
 その方法は、押手を使わずに鍼を鍼尖から1センチ以内で持って、片手で表皮を一瞬で刺し貫きます。取穴は管鍼法と同様に示指で取穴し押し手をつくり、後、示指拇指間を均等にひろげ中心に指針します。
 飛針の利点としては、痛みが少ない事、(手掌、足底など表皮の厚い所でも無痛で刺入)、押手がいらない事、患者が構える前に刺入できる事、管鍼法で難しい所の刺鍼、及び横刺がしやすい事、子供にも気付かれずに刺入できる事。
 欠点としては、深く刺さりすぎる事、やや刺激が強い事、金鍼銀鍼では難しい事、等をあげておられました。
 猪飼先生は01番の大変に細い鍼でも刺鍼しており、コツは手首を動かさず、肩から作動させる事、と述べておられました。また、飛針を練習するのにミカン、バナナを持参され、とても丁寧に教えて頂きました。

 特殊針法は、眼窩内刺鍼、舌咽神経刺鍼等があり、いずれの手技も難しい手技ですが、見事に施術されておりました。顔面神経麻痺を罹患しておられた藤縄先生も眼窩内刺鍼を施術して頂きましたが、様子をお聞きしたところ「なかなか良かった。継続する必要はある。ただ術者と患者の信頼関係が必要な手技」との感想でした。十分に慎重に施術する必要がありそうです。

 この文章を書いているうちに思ったのですが、猪飼先生は、2200年前成都の経穴人形の研究や、講演の中の余論(中国鍼灸への疑義、刺さり過ぎる鍼の問題、補瀉の問題、)等から鍼灸の改革を、臨床をとおして追及しておられるのではないか?との感想を持ちました。

講演される猪飼先生
講演される猪飼先生

猪飼先生の実技供覧
猪飼先生の実技供覧